いつもお世話になっております。
うまづら社長(@umazura_ceo)です。
かっては完全な活字中毒だったうまづらです。
企業してからはビジネス関連本やノンフィクション系を読む機会が増えてしまいましたが、それでも小説は王道です。
今回は、そんなわたしがオススメする本当に面白小説をご紹介したいと思います。
限りなく透明に近いブルー/村上龍
今まで読んだ小説で最も衝撃を受けた作品。
若い人だとカンブリア宮殿の司会のおじさんというイメージしかないかもしれませんが、現代日本を代表する作家だと思います。
一時はW村上として、村上春樹とよく比較されていました。
村上春樹は、今ではノーベル文学賞候補に毎年あがるほどになってしまい、村上龍は作家としての活動は目立たなくなってしまいましたが、私が一番好きな作家です。
あくまで個人的な感想ですが、小説家としての才能は間違いなく村上龍の方が上だと思っています。
そんな村上龍のデビュー作にして、第75回芥川賞受賞作品。
芥川賞受賞作品では最大のベストセラーとなっています。
噂では「限りなく透明に近いブルー」のヒットで講談社のビルがたったとか。。。あくまで噂です。
舞台は東京、基地の町、福生。ここにあるアパートの一室、通称ハウスで主人公リュウや複数の男女がクスリ、LSD、セックス、暴力、兵士との交流などに明け暮れ生活している。明日、何か変わったことがおこるわけでも、何かを探していたり、期待しているわけでもない。リュウは仲間達の行為を客観的に見続け、彼らはハウスを中心にただただ荒廃していく。そしていつの間にかハウスからは仲間達は去っていき、リュウの目にはいつか見た幻覚が鳥として見えた。
限りなく透明に近いブルー – Wikipedia
1976年当時の作品としては、内容はかなり過激です。性描写もかなり露骨なので苦手な方もいるかもしれません。
ただ、この過激な内容を一人称でたんたんと客観的に描写しながら、情緒的かつ詩的に表現する技量と前例のない表現力。
これを20代前半で生み出した才能は、まさに天才としか言えません。
私は10代の時にこの作品を読みましたが、今までの小説の概念を完全に覆された作品です。
海の向こうで戦争が始まる/村上龍
村上龍の第二作目の作品。
デビュー作の 「限りなく透明に近いブルー」は、作者村上龍の実生活や経験をモデルにしたのに対して、こちらは完全なフィクション。
情緒的で私的な独特な文体が 、架空の世界で繰り広げられます。
登場人物がもつ破壊・戦争衝動がテーマとなっています。
ある日浜辺で絵を描いていた主人公はフィニーという不思議な女性に出会う。『彼女はあなたの目に町が映っている』と言う。その街は海の向こうにあり、その街には巨大なゴミに埋もれ『基地』を持ち、子供たちを力強く育てる街だという。そして今その街では盛大な祭りが開かれているという。
海の向こうで戦争が始まるー – Wikipedia
ネタバレになるので詳細は言えませんが、 一つの文章の流れの中で世界が切り替わる表現があり、あまりの文章のうまさに思わず声をあげてしまいそうになった思い出があります。
コインロッカー・ベイビーズ/村上龍
村上龍の長編小説第3作。
2作目の「海の向こうで戦争が始まる」のあとがきで、
この作品を描き上げた夜、あるバーでリチャード・ブローティガンに会った。「二つ目の本になる小説を書いたよ」そう言うと、ブローティガンは「ふうん」と横を向いた。この野郎、おめでとうくらい言ったらどうだ、と思ったが、彼はその時起源が悪かったらしい。もう一度僕に向き直るなり、「大事なのは、三作目だ」と短く言った。
「海の向こうで戦争が始まる」あとがきより
「処女作なんて体験で書けるだろ? 二作目は、一作目で習得した技術と想像力で書ける。体験と想像力を使い果たしたところから作家の戦いは始まるんだから」
と語った村上龍の渾身の三作目。
「限りなく透明に近いブルー」「海の向こうで戦争が始まる」 とあわせて初期三部作と言われています。
当時衝撃の事件として話題になった、「コインロッカー幼児置き去り事件」を題材としています。
コインロッカーで生まれた主人公「キク」と「ハシ」。
彼らの母親を探す旅の物語です。
どこか近未来的な風景描写と3人称で語られる物語は、前2作とはがらりと作風を変えながらも渾身の文学作品として完成されています。
この三部作を私は、順番通りに読みました。
読み終わったのは東京行きの高速バスの車内でした。
「スゲー!!マジで天才だわ」
三作目でまったく違った傑作を生みだした村上龍という作家が、私の中で最も好きな作家になった瞬間でした。
愛と幻想のファシズム/村上龍
村上龍初の政治経済小説。
作家として、幅広く活躍するようになった頃の作品。
あらゆるテーマを無尽に表現する氏の初期の傑作。
内容はゴリゴリです。
カナダで狩猟を生活の一部としていた鈴原冬二は、日本帰国の直前に寄ったアラスカの酒場で飲んだくれていた日本人のゼロと出会う。トウジはゼロに誘われ、日本に帰国し独裁者としての頭角を現す。当初は挑戦的なCMを出し注目を集め、世界経済が恐慌に向かい日本が未曽有の危機を迎えると政治結社「狩猟社」を結成し大衆の支持を集めるようになる。
愛と幻想のファシズム – Wikipedia
村上龍と親交もある、元サッカー選手、元旅人、現実業家の中田英寿も好きな作品の一つとしてこの作品をあげています。
村上龍映画小説集/村上龍
映画を題材として短編集。
村上龍自身の青春時代が舞台の自伝的小説。
各映画をタイトルテーマに12の短編としてまとめられています。
甘い生活/ラスト・ショー/地獄に堕ちた勇者ども/大脱走/狼は天使の匂い/ブルーベルベット/アラビアのロレンス/地獄の黙示録/ロング・グッドバイ/レイジング・ブル/スコピオ・ライジング/ワイルド・エンジェル
イン ザ・ミソスープ/村上龍
夜の歓楽街や風俗をアテンドする主人公「ケンジ」が、謎の外国人「フランク」の依頼を受けたことから事件に巻き込まれていくサイコ・サスペンス。
読売新聞の夕刊で連載され、1998年の読売文学賞受賞作品。
謎の外国人「フランク」を通して語られる現代日本のいびつさや脆弱性を批判した作品。
「新世紀エヴァンゲリオン」の監督庵野秀明が、村上龍の対談で「イン ザ・ミソスープを実写化するのは無理、なぜならフランクを演じられる役者がいないから」と言わしめたほどの問題作。
世界の中心で愛を叫んだけもの/ハーラン・エリスン
去年(2018年6月27日)亡くなった、アメリカのSF作家ハーラン・エリソンの表題を含む短編集。
「世界の中心で愛を叫んだけもの」は、「新世紀エヴァンゲリオン」 のタイトル(響きがかっこよかっただけで採用)になったり、セカチュー(世界の中心で、愛をさけぶ)で流用されいるが内容はまったく関係なし。
内容はかなり難解です。
時空間の中心にある世界(交叉時点) で狂気(悪意)をばらまく七つの頭を持つ竜の狂気を下界に排出しようとするが、その結果下界に狂気がばらまかれる。それを憂いた男が狂気とともに愛を排出。結果、世界はどうなったか。。。
という感じでしょうか。
その他の作品も狂気とバイオレンスと愛に溢れた作品ばかりです。
【収録タイトル】
- 世界の中心で愛を叫んだけもの(The Beast that shouted Love at The Heart of The World)
- 101号線の決闘(Along The Scenic Route)
- 不死鳥(Phoenix)
- 眠れ、安らかに(Asleep: With Still Hands)
- サンタ・クロース対スパイダー(Santa Claus VS. S.P.I.D.E.R.)
- 鈍いナイフで(Try A Dull Knife)
- ピトル・ポーウェブ課(The Pitill Pawob Division)
- 名前のない土地(The Place with No Name)
- 雪よりも白く(White on White)
- 星ぼしへの脱出(Run for The Stars)
- 聞いていますか?(Are Your listening?)
- 満員御礼(S.R.O.)
- 殺戮すべき多くの世界(Worlds to Kill)
- ガラスの小鬼が砕けるように(Shattered like A Glass Goblin)
- 少年と犬(A Boy and His Dog)
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/フィリップ・K・ディック
アメリカのSF作家フィリップ・K・ディックの代表作。
リドリー・スコットが監督した SF映画の名作「ブレードランナー」の原作でもあります。
リック・デッカードは、サン・フランシスコ警察署に所属して、逃亡アンドロイドを「処理」するバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)である。自室の在るビルの屋上に、電気仕掛けの羊を飼っているが、本物の羊を持つまでの経済力は、未だ無い。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? – Wikipedia
8人のアンドロイドが火星を脱走して地球に侵入する。2人はサン・フランシスコ警察署主任のデイヴ・ホールデンにより処理される。だが、残った6人の一人のマックス・ポロコフは、デイヴ・ホールデンに重傷を負わせ、逃走する。サン・フランシスコ警察署のハリイ・ブライアント警視は、部下のリック・デッカードに、残りの6人の処理を命じる。
生きた生物が希少となった未来世界で、人間よりも人間らしいアンドロイドと対峙していく主人公が、
人間とアンドロイドの違いとは?
人間とは?
というSF的命題に葛藤していく物語です。
緋色の研究/アーサー・コナン・ドイル
アーサー・コナン・ドイルの世界的ベストセラー「シャーロック・ホームズ」シリーズの最初の作品。
シャーロック・ホームズについては、言わずもがなですが、記念すべき第一作をおします。
天才探偵シャーロック・ホームズとワトソン医師との最初の出会いや共同生活をワトソン医師の回想で語る第一部から、第一部でおきた殺人事件に至る要因となった歴史を遡り、解決に導く第二部という構成となっています。
孤島の鬼/江戸川 乱歩
日本ミステリー界の巨匠、江戸川乱歩の長編探偵小説。
江戸川乱歩の長編小説では最高傑作の呼び声が高い作品です。
乱歩の独特の世界観が凝縮された本作は、真夜中のクーラーのガンガン聞いた部屋で読んでも背中に何とも言えない汗が噴き出るほどでした。
主人公の蓑浦はまだ30歳にもならない青年であるが、髪は見事な白髪である。彼の体験したある恐ろしい出来事の、そのあまりの恐怖のために黒かった髪が一晩にして真っ白になってしまったのだ。彼の妻の体にはむごたらしい傷跡があり、また恋人と友人を立て続けに亡くした経験を持つが、それも同じ出来事に関連した結果であった。
孤島の鬼 – Wikipedia
ドグラマグラ/夢野久作
その唯一無二の世界観から熱狂的なファンを持つ作家夢野久作の代表作。
あまりに独特な作風で、本作は日本探偵小説三大奇書(他は小栗虫太郎「黒死館殺人事件」、中井英夫「虚無への供物」 )の一つにかずえられています。
有名な作品ですが、内容がかなり突飛で難解なことから途中で挫折する人も多く、ある程度の覚悟が必要になると思います。
枯木灘/中上健次
この小説が面白いかどうかは賛否両論あると思いますが、中上健次という作家の凄みが一番感じられる作品。
中上健次は土地とそこに住む人間の血の宿命を描く作家です。
「枯木灘」はその集大成的な作品で、虚飾を排除したストレートな文体で表現される、人間の営み、憎悪、欲望は、まるで現代の神話のよう。
中上文学の最高峰たる作品です。
百年の孤独/ガブリエル・ガルシア=マルケス
1982年にノーベル文学賞を受賞した、南米コロンビアの作家ガブリエル・ガルシア=マルケスの代表作。
ある一族が創設した村の誕生から滅亡までの100年の物語。
現実と非現実が融合したマジックリアリズムの手法をもちいた本作は、不思議な挿話が何度も登場します。
また、100年の中で繰り広げられる人間の愛、憎悪、喜劇、悲劇は形をかえて受け継がれ何度も同様の物語を紡いでいきます。
これらの繰り返しが、滅亡に向かう一族と村の形を、実際に読んでる読み手の脳内でリアルに消えてしまったかのような錯覚をおこさせる不思議な作品です。
ラストまで読まないとこの作品の凄さは決してわからないので、気合を入れて読了することをおすすめします。
まとめ
うまづらが本当にオススメする小説を13選紹介しました。
全て傑作中の傑作です。
まだ未読の方は是非読んでみて下さい。